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新潟家庭裁判所十日町出張所 昭和43年(家イ)28号 審判 1969年2月15日

申立人 小守ミヨ子(仮名)

相手方 小守末男(仮名)

主文

申立人と相手方とを離婚する。

相手方は申立人に対し、金五〇万円を支払え。

理由

一、申立ての要旨

申立人は、主文一項同旨及び金一五〇万円の支払いを求める旨の調停を申立て、その理由として次のとおり述べた。

(一)  申立人と相手方は、昭和四三年四月二九日結婚式をあげて同居し、同年五月二〇日その届出をした。

(二)  婚約当時、申立人は自己の顔面に火傷の跡があることを相手方に伝え、相手方の了解を得たうえ結婚したものである。然し、その後相手方は、申立人の顔面のほか頭部にも同様火傷の跡があることを知り、申立人に対しその治療をすすめたので申立人は医師の診断をうけたところ、治療の方法がないとのことであつた。そこで申立人はその結果を相手方に伝えたところ離婚の話が出てそれについての双方の主張が一致せず、申立人は昭和四三年八月一日から実家に帰り別居状態が続いている。

(三)  よつて、前記の調停を求める。

二、当裁判所の判断

(一)  本事件における資料(戸籍謄本、北山治雄、小守好夫、畑中七郎、小守トメ、申立人(一、二回)及び相手方(一、二回)に対する各審問の結果、調停手続の経過)を総合すれば、次の事実が認められる。

(イ)  申立人(昭和一九年五月二二日生)と相手方(昭和一一年二月一一日生)は、昭和四三年二月頃いわゆる見合をし、同年四月二九日挙式して同居し、同年五月二〇日婚姻届をしたものである。

(ロ)  ところで、当事者間に上記婚姻話が出た際に、申立人は幼少の頃から顔と頭部の髪の中に火傷の跡があつたことから、申立人側より相手方側に申立人の顔に火傷の跡があることを伝えたが、相手方側ではたまたま相手方の母が病気で入院中で女手がほしいことでもあり、また、相手方にも火傷の跡のある姉があつたことから、申立人側の上記事情を了解のうえ見合いをし、その結果上記のとおり挙式して直ちに当事者は相手方の生家において同居生活をはじめたものである。

(ハ)  申立人の嫁入先の相手方の家の家族構成は、申立人のほかには相手方とその父母の三名であつたが、相手方の家は、その地区における割合に古い家柄であつたこともあつて、申立人にとつて自己の従前の生活環境や慣行とはかなり相違があり、その共同生活関係に必らずしも円滑とはいい難かつた。そこで、その点につき申立人は相手方に相談したが、相手方は、母とよく相談しないで申立人と結婚したのだから我慢するように言い親身になつて相談に乗つてくれることがなかつた。そして、同年五月頃相手方の母が申立人の頭部にある火傷の跡をみつけたことからその共同生活は一層円滑さを欠くようになり、同年七月二三日には相手方の母が家出するに至つた。そして、申立人も健康状況が悪くなつたので同年八月一日実家に行くことの許可を相手方の父に求めたところ、同人から火傷の跡を治療してから来るよう要求されたので、十日町市内の田中外科医師の診断をうけたところ、治療の手を加えない方がよい旨の診察結果であつたので、申立人方ではそれを相手方に伝えたが、その際相手方へ帰宅することを同人方では望んでいない様子であつた。

そこにおいて、申立人は相手方と離婚することも止むなしと考え本件調停を申立て、相手方も離婚を望んでいるが、調停においては結局財産上の給付額の点から合意に至らなかつた。

(ニ)  以上の各事実に徴すれば、もはや当事者の婚姻関係は円満な状況に復することが困難な破綻状況に立ち至つたというべきで、両者の間には婚姻を継続し難い重大な事由が存するというべきである。

(二)  そこで、次に離婚に伴う財産上の給付の点について検討するに、当裁判所は離婚と財産分与(慰藉料をを含む)を求める調停事件において、前者につき家事審判法二四条一項により調停に代る審判をするときは、それと密接不可分の関係にある後者についてもそれと同時に審判を行うことができ、同条二項はかかる不可分の審判事項についてまでその分離的判断をするよう定めているものではないと解する。しかして、上記資料によれば上記事実のほか次の事実が認められる。

(イ)  申立人は、相手方と同居を開始してから一ヵ月位は炊事、洗濯、掃除等の家事仕事を行い、その後回数も多くなく、かつ慣れないために能率は上らなかつたが別居するまでの間田の仕事にも従事した。

(ロ)  女性たる申立人は相手方との婚姻が初婚で、この離婚により強い精神的苦痛を蒙つたと認めることができるが、この当事者間の婚姻生活の破綻原因は、少くとも上記のように申立人が婚家先においてその異る生活環境、慣習等のため苦労して、相手方に相談しても同人がそれに充分に応えることをしなかつたことに、結局その最大の原因があると認められる。

(ハ)  申立人にとつて、今後第三者と再び結婚することはかなり困難であるし、申立人はこの離婚に伴う精神的苦痛もあつて今後婚姻を考えず和裁などをして生活してゆくというのであるが、その離婚後の申立人の自主的な生活設計の基礎を確立する必要があると認められる。

(ニ)  以上の各事実を総合すれば、申立人による相手方の財産へ寄与した分の清算、離婚に伴う申立人への慰藉料及び申立人の離婚後の生活についての扶養の意味を含めて、相手方より申立人に対し金五〇万円の給付をすることが相当であると認める。

(三)  よつて、主文のとおり審判する。

(家事審判官 渋川満)

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